おすすめ絵本:『天動説の絵本』

 

小中学生のお子さんに

超おすすめの絵本をご紹介しましょう。

 

『天動説の絵本』は

天文の 天動説(てんどうせつ)や地動説(ちどうせつ)の

むずかしい解説の本ではなくて

私たち人間が 遠いむかし

どんなふうに世界を感じていたのか

どんなふうに世界の見かたを広げてきたのかを

やさしく語ってくれる絵本です。

 

「てんがうごいていたころのはなし」

という副題の とても美しい絵本です(※)。

 

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冒頭、お話しはこう始まります。

『小さな国がありました。

人びとは太陽の下でくらしていました。

森にはいって、けものを追う人もいました。

(中略)

人びとは、しずんでゆく太陽にむかっていのりました。

日でりがつづいたり、

じしんがおこったり、

おそろしい病気がはやったりしませんよう、

にんげんの力では、どうにもならないことを、

人びとは天の神さまにおねがいしたのです。』

 

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世の中で起きる

フシギなこと

不可解なこと

理不尽なこと

 

現代でも

不思議なことや 説明できないことに出会うたび

私たちは 大きな畏(おそ)れ や不安を感じるものです。

 

まだ科学を手にしていない時代

その畏れや不安の

理由や原因を

人間は神様や悪魔にもとめました

(今でも まだまだその名残はありますね。

どんなことがあるか 考えてみるものおもしろいでしょう)。

 

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人間が長い時間をかけて

少しずつ「知」をつみあげて

ようやく世界のありようが見えてきたころ

 

「地球はまるくて 太陽のまわりをわっている」

と言いだした人たちがいましたが、

いじめられてしまいました。

権力をもっている人たちは

神さまがつくられた地球や人間が

世界の中心にないなんて許せなかったのです。

 

そこには 神さまを信じる純粋な気持ちもあったけれど

自分たちの権威(けんい)を守りたい気持ちもありました。

 

どんなことが起きたかは

この絵本や 歴史の教科書なんかにも出てきます。

とてもとてもむごいことが起きてきたのです。

 

 

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でも作者の安野さんは あとがきでこう書いています。

 

『天動説を信じていた昔の人びとがまちがっていたことを理由に、

古い時代を馬鹿にするような考え方が少しでもあってはいけません。

今日の私たちが、私たちにとっての真理を手に入れるために、

天動説の時代はどうしても必要だったのです。』

 

世界の真理(正しいこと)を見つけたのに

応援してもらえないばかりか

ろうやに入れられたり 裁判にかけられたり

火あぶりの刑にされた人たちの気持ちを想像してほしい、

そして

 

『そうした歴史を思うと、「地球は丸くて動く」などと、

なんの感動もなしに軽がるしく言ってもらっては困るのです。』

 

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私たちの今日の生活のすべては

昔のひとたちから 連綿(れんめん)と受けついできた

知の積み重ねでできています。

どんな年代にも 中には 時代遅れのものがあります。

そうしたものを、すでに手にした方法を

「かしこく」使って 修正しながら

私たちは歴史をつづけていくのです。

 

「あたりまえ」は なに一つないことを

この絵本もきっと教えてくれますよ。

子どもだけじゃなくて 大人にもおすすめです。

 

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『天動説の絵本』 安野光雅 著 福音館書店 ISBN4-8340-0751-0
 

2021/08/17 タイトル変更